奈良県立医科大学 第二解剖教室 分子機能形態学講座
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研究内容

新規疼痛関連因子の同定とその機能解析

私達の研究室では複数の系統の遺伝子改変マウスを飼育していますが、これらのうち、化学刺激に対する痛み反応が極端に低下しているトランスジェニックマウスを他の研究過程で偶然に見出しました。このマウスは炎症性の疼痛が他の種類の痛みに比較して特異的に減弱しており、また興味深いことに刺激性化学物質を後肢足背に注射しても腫脹・発赤がほとんど起こりません(写真上:野生型マウスス、下:遺伝子改変マウス)。このマウスはマクロファージに異常がみられることを既に見出しています。この極端な疼痛鈍麻の表現型からその原因となる遺伝子を探り当てること(順遺伝学スクリーニング)、新たに同定する遺伝子が免疫系細胞を介してどのように疼痛発生機序に関与するかを解析しています。

白質オリゴデンドロサイトの発生機序

脳の発達や機能、精神神経疾患の病態には、ミエリン(髄鞘)による神経伝達の調節が深く関わっています。ミエリンを構成する細胞はグリア細胞の中でもオリゴデンドロサイトが担当しています。脳梁などの白質に存在するオリゴデンドロサイトは、細胞体が一列に並んだビーズ状の形態をとることが特徴ですが(図)、この規則的に並んだ白質オリゴデンドロサイトがどのように形成されるのか、この規則的な配列にどのような意義があるのか、などの問いに対して現時点では明確に答えられません。本研究では、この「細胞ビーズ」の形成機構、関与する遺伝子群の同定および機能を明らかにすることを目的として研究しています。

アストロサイトによる神経回路の制御機構


アストロサイトは脳の大部分を占める細胞であり、その数は神経細胞を大きく上回ります。最近の研究からアストロサイトは非常に多機能で、脳内情報処理に絶大な影響力を持っていることが明らかになり、創薬の標的細胞としても注目されつつあります。 最近私達は、アストロサイトの新規亜集団を見出しました。これらはOlig2(basic helix-loop-helix型転写因子)を発現し、脳のいくつかの神経核に特異的に集積し、またGFAP(一般的なアストロサイトマーカー)をほぼ発現しないという特徴を持っています(写真上:緑/Olig2アストロサイト、白/GFAP、赤/sox9)。更に免疫電子顕微鏡学的解析によりこのアストロサイトが抑制性シナプスを優先的に取り囲むことを見出しました(写真下:T/抑制性シナプスターミナル、矢印/Olig2アストロサイトの微細突起)。この新規アストロサイト亜集団が、神経回路とどう関わるのか? その制御機構を明らかにするために、様々な手法を用いて解析を進めています。

神経細胞内の物質輸送機構

神経細胞は、細胞の外に存在する神経伝達物質や神経栄養因子の受容体(写真:緑/受容体、赤/神経細胞)を細胞表面に出したり細胞内に取り込んだりして、周辺環境に対する応答性を変化させています。エンドサイトーシスによって神経細胞内に取り込まれた物質がどのようにして輸送され、選別、分解、再利用されるのか、この機構に関わるエンドソームに発現するタンパクの役割を調べています。

主な実験手法

  • 組織学的解析(免疫染色、in situ hybridization、共焦点レーザー顕微鏡・電子顕微鏡観察)
  • 分子生物学実験(遺伝子操作、フローサイトメトリー、マイクロアレイ解析)
  • 生化学実験(ウエスタンブロッティング、ELISA法)
  • 細胞培養
  • タモキシフェン誘導性Cre/loxPシステム
  • 動物(マウス)実験(行動解析、骨髄移植、脳内ウイルス局所投与)
大学院生募集

ASIAN-PACIFIC SOCIETY FOR NEUROCHEMISTRY

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(機能形態学講座)

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